「かわいそう」という圧力
先日、子育て中の女性から伺った話が、心に残っています。
夫婦二人で暮らし、子どもができたばっかりの時は、夫婦共に子育てして家事もしていた。それが、都合で三世代同居になると、義母が夫(義母の息子)が家事をしたりおむつ交換をしたりする姿が見るに耐えられないのか、「私がやるから、息子にさせるな!」と出てきた。夫は家の事はなにもしなくなった。
そのうち、私が忙しくて、外食したりお惣菜を買ってきてご飯にすると、
「(孫が)かわいそう」
と口を出すように。
今も昔も、嫁姑関係というのは難しいものです。劇的に変化する昨今の事情には関せず、旧時代の価値観を押し付けてくる、言ってみれば「昭和圧力」をプッシュしくる話は、今も昔もたくさん伺います。21世紀に入ってだいぶん経ちますが、価値観はまだ黒電話でダイヤルを回す時代と変わらない人が大勢います。それはもう仕方のないこと。そして、彼らはヒマで仕方ないのです。人の役には立ちたいけれど、社会に出て役に立てる自信もない。せいぜい家という囲いの中で、役に立つという名の権力行使をしているだけです。
祖父母からの「孫がかわいそう」という圧力は、親世代からすると、子どもを人質に取られ、身代金を搾り取られるようなものです。いっそ、子どもを寄宿舎のある全寮制の超エリート学校にでも入学させた方が、スッキリするかもしれません。親がストレスを溜め込んで萎縮している姿が、子どもの成長にイイ影響を与えるはずもありませんから。
「三世代同居などやめるべき」というのは、事情を知らない人間だからこそ言えるのかもしれません。ですが、どんな事情で三世代同居が始まったにせよ、「かわいそう」という圧力を発するモラルハラスメントから逃れるのは、まっとうな人生選択の一つです。